春のうららの隅田川
春が嫌いだ。
春はぽかぽかして過ごしやすい。
街ゆく人の服装は淡いパステルカラーに彩られ首から一眼レフを下げたお洒落なジョンレノンみたいな眼鏡をかけた女が河原を散歩しながら空の写真を撮る春が嫌いだ。
一方、冬は過ごしやすい。
日が暮れるのも早いので17時を過ぎるとすぐ夜が迎えに来る。足早に下を向いて帰路についていても私の顔は見えない。
「早く帰っていいよ」と上司が死んでも言わないような事を冬は言ってくれるような気がする。
その点、春は厳しい。
「ほら!!!!桜が綺麗でしょ???!!!みんな見上げて写真を撮っているのに何下向いてるの?春は出会いと別れの季節!!不安と期待を胸に新しいスタートを切らなきゃ!!!何暗い顔してるの!!!こんなに良い天気なのに!!」
って洋服の青山のCMみたいな事を春は言ってくる。
まるで春を楽しめない私が劣っているかのようだ。
私だって気候だけでいうと春は好きだ。
お気に入りのワンピースを着て阪急電車に乗って王子動物園に行き、三ノ宮のお洒落で静かな喫茶店で村上春樹を読んだことだってある
けど春は許してくれない
楽しめないお前が悪いと責めてくる
だから春は大学に行かなかった。
母親に言うと「鬱病の知り合いと同じこと言ってる」と言われた。
秋は書店が読書フェアしてくれるから好きだ。
夏は熊谷市と館林市が暑さ日本一で争っているのを見れるから好きだ。
ハルシオンは好きだったのに春はどうしても好きになれない。
それではみなさま良き宵を。